【読んだ本】すべての社会問題はあなたの生産性にかかっている。伊賀泰代「生産性 マッキンゼーが組織・人材に求めるもの」

KAIZENは世界共通語

ホワイトカラー人材の生産性が低いというのはよく聞くような気がします。その筆頭は公務員です。

親方日の丸のもと効率重視なんて度外視し、いったいなんの効果があるのかわからない政策で税金を浪費する。こうやって書くと公務員なんてのは悪の権化ですね。

国家だけでなく地方公務員もそうです。国や県からやれと言われたことをやるのはいいんですが、いまいちなぜやるのかよくわかっていない。大きな自治体になればそれなりに法制職員がいますが、小さな自治体になると法律の解釈すらあやしい時がある。地方議会は首長と対立することはなく、かといって政治的合意に達して住民のための政策を推し進めているかというとそうでもない。地方の最前線にいる公務員はついに指針を失い、やっていることを見せかけることがうまくなる……。

いやいや、批判することが目的ではありません。公務員がなぜこうなるのか、それはトヨタ生産方式でいう「あるべき姿」がいまいち決まっていないからです。

国になるとトップも政治のプロですから、めざすべき方向がある程度明確です(余談ですが、Netflixの「ハウスオブカード」のような野心に満ち満ちている政治であっても、ある意味明確なビジョンを持った政治なのです)。しかし地方の首長は政治経験が少なかったり、あるいは明確なビジョンではなく票集めで勝ってしまう人もいます。自治体によっては5,000票あれば勝てるのです。

まぁ、首長でころころ目指す方向が変わっても困るので、総務省は「総合計画」と呼ばれるものを作るように自治体に指示しています。本来ここに自治体の「あるべき姿」が描かれるはずなのですが、これをうまくまとめている自治体というのはあまりお見かけしたことがありません。かくいう私の勤め先も総合計画はひどくて、めざすべき自治体像として「緑に映える」とか書かれています。映えるというのは「照らされて輝く」というような意味ですが、肌の色を緑にでもすればよいのでしょうか。

そんなシュレックみたいな自治体誰も求めていないのです。求めるべきは住みよい街であって、聞こえの良い「総花的」な計画などいらないのです。

ではどうしたらそんな自治体が手に入るのか? それは公務員の「生産性」にかかっています。

 

人口急減社会は思っている以上にヤバい


今回ご紹介する伊賀泰代「生産性 マッキンゼーが組織・人材に求めるもの」は、4年前に「採用基準」で話題になった著者の2冊目の本です。

著者は終章でマクロ的な視点にたって、日本の生産性と社会問題について論じています。

理解すべきなのは、もはや「負担の移転」だけでは問題は解決できないということです。100人のうち10人だけに「配慮すべき理由」がある時代なら、残りの90人に少しずつ負担を移転することで問題は解決できました。
しかし今後は、100人のうち60人から70人もが「配慮すべき理由」をもつ時代になるという前提での制度設計が必要です。その負担を残りの30%の人に移転して解決するのは、もはや不可能なのです。(P.230)

「配慮すべき理由」とは、育児休暇や介護休職といった問題です。前回ご紹介した「そもそも」では、人間はどうやったって群れで子育てするしかない仕組みになっていることが書かれていました。

これが高度経済成長の時代であれば、30%に仕事を回すのではなく、「100人ではなく200人雇う」という方法でも解決可能でした。しかし日本はこれからものすごい勢いで人口減少に見舞われ、生産人口も同時に大量に失われます。

地方創生についても、問題解決の鍵は都会の若者の地方移住ではありません。日本の人口は2016年の1億2,693万人から、次の50年で8,026万人まで4,667万人減ると予測されています。現在、北海道、東北、北陸、中国、四国、九州地方の人口の合計が4,542万人ですから、それらの地域の全人口以上の数が、次の50年の間(今年生まれた子どもが50歳になるまでの間 中略)に消えていくのです。(p.235)

私もそろそろ子どもを持つ頃合いの年齢なのですが、生まれてくる子が経験する時代は日本がかつて経験したことのない人口急減社会なのです。

人が減る、ということは非常に大切な観点です。100のアウトプットを100人で出していて、そこから30人減れば70のアウトプットしか出せなくなります。日本はすでに経済大国などではなく、一人当たりGDPは世界で22位です(IMFのデータによる)。ちなみに名目GDPは世界で3位なのですが、ここからも明らかなように「100のアウトプットを100人でまかなっている状態」です。

われわれの子どもたちは、100人もいないのです。そんな彼らにいったいどのような教育を施していけば生き残っていけるのか? それはやはり、「50人で100のアウトプットを出す」ことを目指すことなのでしょう。

 

生産性を高めることで成長をする


さて、この本では生産性を高める場合、4つのアプローチがあることが紹介されています。

生産性とは「アウトプット(成果物)をインプット(投資)で割った率」と定義できます。その結果が高ければ高いほど生産性があがったとみなします。つまり、アウトプットを拡大するか、インプットを縮小することで高い生産性が実現します。

ではどのように拡大or縮小をするのか。その方法として「改善」と「革新」の2つがあると著者はいいます。「改善」とは作業効率をあげること、「革新」は部課レベルでの事業見直し、というように定義できます。そういうわけで、以下の4つが生産性を高めるアプローチになります。

①改善により、投入資源を小さくする
②革新により、投入資源を小さくする
③改善により、成果を大きくする
④革新により、成果を大きくする

どんな改善活動もこのうちのどれかに分類できます。トヨタ生産方式で言われる「日々改善」は基本的には原価低減を目指すので、「改善により、投入資源を小さくする」方式であると言えます。これを徹底的にやるからこそトヨタは強いのですね。

「改善活動」自体は社会人の方にとっては馴染みがある言葉だと思います。しかし、これって結構やらされ感が強いですよね。そこで著者は、「生産性」の概念を自分の成長に結びつけられると、モチベーションも保てるというようなことを言っています。

つまり、単純に「生産性があがる=成長した」と定義すればよいのです。

たとえば処理した帳票が10件から15件になったら「成長した」のです。月の残業時間が3時間減っただけでも生産性の定義からすれば上がっているので「成長」です。とにかくポジティブな結果に対して「成長した」と考えるわけです。

これを実践する時に引っかかるのが、「なにがアウトプットなのか」ということです。もしわれわれが成長したいと思うのならば、これを考えることが重要です。

私は「そのアウトプットは正しい目標か」というのは二の次でよいと思います。とにかくなんでもよいので、アウトプットと呼べるものを出すべきです。ささいな改善に対しては「職場で笑顔をみかけた回数」とかも指標になるのではないかと思います。

 

「生産性」は夢物語か


ホワイトカラーにおける生産性という議論は結局のところ、数値を出せないので概念的になってしまいます。

しかし、だからといって放置できる問題ではないのです。特に公務員は税金の再分配機能を担わなければならないので、本当に急務の課題です。

グローバル社会の中で、仕事には実績が求められています。われわれは本当に大変な時代に生まれてしまったと思いますが、しかしこのおかげで個人は能力を示すことができるのです。

なにをいわれても動じない実績を生産し、「あるべき姿」をめざしていく。難しいことですが、方向性としては間違っていないでしょう。

 

 

 

投稿者: 森野

図書館で司書をしています

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