【読んだ本】どうでもいい話をいかに読ませるか。「『読ませる』ための文章センスが身につく本」奥野宣之著

「読ませる」ための文章センスが身につく本

義理兄のとこの双子ちゃんをあずかったのですが、家の中が嵐のような状況になりました。主に分泌液とか。

私の周りは赤ちゃんラッシュで、面倒みる機会もかなりできてきたのですが、赤ちゃんは本当に予想外ですね。首の据わってないうちはまだいいのですが、ハイハイができるともうそこら中の危険物にツッこんでいくわよだれを撒き散らすわiPadを食べるわ。まさにドッタンバッタンおおさわぎしております。

しかしそんな落ち着きのない彼らの動きを瞬時に止めるものがあります。

NHKの「おかあさんといっしょ」です。

赤ちゃん初心者の私のような方は本当に驚くと思うのですが、おかあさんといっしょのメロディーを流すだけで赤ちゃんの動きが止まります。そして画面をみるともうおもちゃを振っていっしょにダンスを始めます。なんという吸引力でしょうか。

さてそんなわけで、ブログの文章も「おかあさんといっしょ」並みの吸引力を誇りたい……! という方にオススメなのが、奥野宣之さんの「『読ませる』ための文章センスが身につく本」です。

 

エッセイやコラム=どうでもいい話なのについ読んでしまう


著者の奥野さんは趣味でエッセイやコラムの名文を集めているそうです。奥野さんによると、エッセイやコラムというのは内容は基本的にどうでもいい話が多いそうです。なのに、名手と言われる人たちはなぜか読者を引き込んで、10ページくらいは一気に読ませてしまいます。

エッセイやコラムの名手といえば、私はなぜか丸谷才一を思い出してしまいます。彼の文章は歴史的かな遣いを使っていることで格調高くみえるのですが、いま手元にあった「月とメロン」をパッと開いてみたら、延々とネクタイについて語っていました。いやほんと、どうでもいい。

そういうどうでもいい話なのに読んでしまうのはなぜか、という分析をすることで、「読ませる」ためにプロはどんな工夫をしているのかを解き明かすのが本書です。

表紙にも書いてありますが、基本的に以下の4つのステップで「読ませる」文章を考察しています。

  1. つかむ
  2. のせる
  3. 転がす
  4. 落とす

この前書いた本と違って、今回はちゃんと「落とす」ということも意識されていますね。読むとわかりますが、これはエッセイの流れでもあります。しかも、このエッセイの技術はどんな文章にも応用できるのです。実際に本文中では、企画書や謝罪文の書き方にも言及されています。

余談ですが、その技術はすでにこの本に応用されています。私は昼休みの20分で50ページも読み進めてしまって驚きました。それほど読みやすくておもしろい文章になっているのです。文章術ということは忘れて、奥野さんのおもしろい話を読むという感覚で読めてしまいます。

 

あなたの書く文章は論文ではないのだから、論理的である必要はない


さて、さまざまなテクニックが紹介されている本なのですべてを紹介するわけには参りませんが、「オチ」のテクニックは大変参考になりました。以下引用。

一般的な文章テクニックの本には、文章の終わりは「余韻が残るように」「結論をはっきりさせるように」などと書いてあります。
対して、この本で重視しているのは「落ちた感じ」です。最後まで読んでよかったと「納得」できるか。それだけが重要であって、文章というのは、多少ヘンであったり、よく考えれば論理がおかしかったりしても、心地よく読んで違和感を覚えなければOKなのです。(P.190)

身近なエッセイとして挙げられているのが、日刊新聞の一面コラムです。「天声人語」とかですね。

あのコラム欄は紙幅もない上、時事ネタを扱うのでほとんど書く時間もないと思います。なので、考えてみると論理的にアレ? となるような文章が結構あるのですが、「天声人語」はかなりの人気を誇っていますよね。

そこで使われているのは、「断定する」「なんとなく納得させる」というようなテクニックです。このテクニック、実は私も冒頭で使ってみました。

しれっと書いていますが、どう考えても「おかあさんといっしょ」の吸引力がほしいと思うブロガーはいないと思います。しかし、導入のオチとして書いたところで、「おかあさんといっしょ」の有用性を検討しはじめる方などいないと思います。実際、ここまで読んだあなたも「なにいってんだこいつ」くらいでさらっと流されたのではないでしょうか。エッセイストや文章のうまい人は、これを狙ってやるわけですね。

まとめると以下の引用になります。

繰り返しになりますが、文章においては、「論理的な正しさ」より「なんとなくの納得感」のほうがはるかに大切です。論理的に正しくても「流れ」がつっかえていたり「納得感」の演出が甘い文章は、どこか食い足りない印象になってしまいます。(P.202)

 

文章を書かなければならない場面は、必ず訪れる


というわけで、この本を読み進めるにつれ、文章術の本というのを忘れて楽しんでしまいました。

私が奥野さんの本を読むのはこれが3冊目です。読んだのは「情報は一冊のノートにまとめなさい」と「図書館『超』活用術」です。

実は、「情報は〜」を読んでいた時に、アナログな使い方を提唱されているなと勝手に50代くらいの方だと想像していたのですが、30代の方でした。私(現在30歳)と5つしか違わない……。

なので、奥野さんの文章術というのは決して古くさいものではなく、むしろさまざまな情報発信を誰でも行う現代に非常にマッチしています。さすがライターとして食っている方なだけあるわけです。

情報発信が容易な現代にあって、われわれは本当にさまざまな場面で文章を書く必要にせまられています。しかもそういう時に限って、必ず誰かに読んでもらわなければいけない文章だったりするのです。

格式張った文章では飽きられてしまうし、かといってLINEのノリで顔文字なんて使えるわけがないし……と困ってしまう前に、この本を一読してひとつふたつテクニックを押さえておけば、上司もお得意さまもニッコリ笑顔で迎えてくれるでしょう。

 

投稿者: 森野

図書館で司書をしています

“【読んだ本】どうでもいい話をいかに読ませるか。「『読ませる』ための文章センスが身につく本」奥野宣之著” への 2 件のフィードバック

  1. こんにちは、KZと申します。
    私は今年の三月からブログという形で文章を書き始め、その難しさに四苦八苦しており、大変参考になりました!

    論理的な正しさが全てではないことはなんとなく自分の中で腑に落ちましたので実践してみようと思います^^

    1. 読んでいただいてありがとうございます!
      私もつい先日から始めたばかりなのですが、思ったよりも難しいですよね。
      読書する人はインプットが多いはずですから、方法さえわかればアウトプットも容易なはず! と考えて、お互いがんばりましょう!

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