「図書館の書架が満杯ではない」ことが悪いこと? 和歌山市議のツイートを考える

図書館の書架

和歌山市議が図書館の新しい分館に対して文句を言ったことで炎上しているようです。内容を読んでみたのですが、どう考えても文教に対して無知な方のようです。

 

 

 

ハフィントンポストの記事では「賛否の声」なんてなっていますが、ツイッターを見ている限りどうも「否の声」しかありません^^;

 

書架が満杯だといいこと、悪いこと


ほとんどの方が市議を批判しているので安心していますが、開館と同時に書架(本棚のこと)が満杯というのはありえません。

話題の市議は本屋さんと比較して発言しているようですが、図書館は本屋と違って本を売りませんし、ましてや返品などもしません。

図書館の本は館の方針にもよりますが、中には10年以上使用される本もあります。オープンしてすぐに書架を満杯にしてしまったら、どこに新しい本を入れればよいのでしょうか。

確かにワクワクするようなことはないかもしれません。私であれば、空いている棚に面陳(表紙を面出しして並べること)してにぎやかしをしたと思います。

しかしここは分館でもありますし、ほかの部分でもほとんど装飾がなされていないところをみると、どうも人手が足りなかったのではないかなと思います。最近はとても綺麗な図書館が多いので比較されるのも仕方がありませんが、図書館の第一の使命は市民の皆様に本を届けることです。それを考えれば、たとえ装飾ができなくとも、この空いている書架にこれから出てくる新しい知識をめいっぱい詰めていくのだ、ということがわかっていただけるのではないかなと思います。

 

市議は図書館政策をどう考えているか?


市議会議員が図書館のことについてこれだけ無知というのは、その職責を考えればおかしなことです。よしんば「知らなかった」としても、ツイッターにあげるのではなく図書館職員に「なぜ書架がこれだけ空いているのか」と質問すべきところですし、そのような行政への質問は市議の活動として行わなければならないものでしょう。

この市議はどうやら武雄市や高梁市で話題の「ツタヤ図書館」が欲しいようです。武雄市や高梁市の図書館に感心しきりで、ツイートもしているとか。その思いが、この予算をかけずとも使命を果たそうとしている分館を批判することに繋がったようです。

「ツタヤ図書館」がいいかどうかは置いといて、館内のキレイさがダントツなのは誰もが認めることだと思います。しかしそれにはお金がかかりますし、子育て支援センターなどとの複合施設で「ツタヤ図書館」が必要なのかという問題にもなります。

市議はその後、こんなツイートもしています。

削っていないのはそりゃそうです。全国ほとんどどこの自治体でも、市議会は予算案を否決しません。名古屋市のように市長VS市議会の図式が出来上がっている特殊な自治体であればそういうことをしますが、この市議が過去に予算案を削ったことなど一度もないと思います。

この市議は図書館のビジョンをお持ちで、削ることに言及するということは否決する意思もあるようなので、ぜひその政治手腕を発揮していただいてツタヤ図書館ができるようになるまで予算案を否決していただきたいものです。税収減のこの時代に社会保障費でも削れば満足でしょうか。

さらに、「財政部に折り合いをつけて」という部分は図書館に責任を転嫁しているとしか言いようがないですが、そもそも分館であればこのレベルでなんの問題もありません。しかもここは複合施設なので、トイレなど共用部を効率的に動かせます。これが図書館単独で建物を建てていればもっとお金がかかっているはずです。行政の手法としてはまったく合理的ですし、「ツタヤ図書館じゃない」というのは図書館の落ち度ではありません

かといって、市民ニーズを聞き損ねた結果なのか、というとそれもどうかと思います。ここは子育て支援センターなどと一緒に入る分館だそうです。この施設は子育て支援に特化していくことを考えられているわけで、そのような施設にツタヤ図書館が入ったところで、赤ちゃん連れの親子が利用するとは思えません。和歌山市にツタヤ図書館が必要なのであれば、それは中央図書館に相当する施設になるでしょうから、分館でそんなことを検討するのはおかしいと思います。

(そもそも、和歌山市民図書館って結構立派な施設なんですよね。この市議はそちらに行かれたことがあるのでしょうか)

 

図書館員がこの問題から学ぶべきことはなにか


たぶん図書館雑誌でいつかこれに言及するベテラン司書の方がいらっしゃると思うので、私が言及するまでもないのですが、私自身への戒めとして考えておきたいと思います。

この問題から学ぶべきはただ一つ、「市議にすら伝わってないのだから、図書館がなにを考えているかは市民にも伝わっているわけがない」。

ほんとに情報発信は大切です。もっとどんどん何を考えているか、図書館は情報発信すべきです。

こういうところで言うと、「ツタヤ図書館」はかなりSEO対策なども考えてウェブサイトを作成しているんですよね。これはもちろんツタヤのオンラインショップなどのノウハウを持ち込んだものでしょうから、民間のノウハウを活用した事例としてとてもいいことだと思います。

図書館の指定管理大手のTRC(図書館流通センター)は、図書館の情報発信に対してはあまり関心がないのか、おざなりなウェブサイトが多いです。SNS活用はうまいところも見かけますが、SEO対策なんておそらく考えていません。

さらに直営の図書館など、行政職員しかいないわけですから、商売をした経験もないのにウェブサイトの重要性に気づいているわけがありません。

これからの時代、行政機関としての図書館は本当に困難が続くと思います。しかし、市民の中には図書館の存続を願う人が多くいます。図書館員はもちろん基本的な奉仕の使命を大切にしつつも、情報発信を心がけていくべきではないかな、と思っております。

投稿者: 森野

図書館で司書をしています

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