【感想】2017年青少年読書感想文コンクール課題図書「ぼくたちのリアル」

読書感想文コンクールの本は、大人が読んでもハマる!

今年もこの季節がやってきました。

多くの小中学校で参加する「青少年読書感想文コンクール」。

各学校で優秀に選ばれた人はこのコンクールへ応募することになります。

コンクールに応募する場合、「自由読書」の部と「課題読書」の部があります。ここで「課題読書」の課題に選ばれた本は毎年図書館で争奪戦になります^^;

そのうちのひとつ、「小学校高学年の部」の課題図書になった「ぼくたちのリアル」(戸森しるこ著、講談社)をさっそく読んできましたので、感想を書きたいと思います。小学校高学年は5年生、6年生が対象ですね。

ぜひ読書感想文の題材選びの参考にしてください! と言いたいところなのですが、これ、大人が読んでもハマります

毎年、読書感想文コンクールの課題図書は本当に良質な本が選ばれていると感心してしまいます。今回は大人の方へ向けたリコメンドという感じで書いてみたいと思います。

 

読書感想文コンクールの本は、大人が読んでもハマる!
読書感想文コンクールの本は、大人が読んでもハマる!

 

 

タイトルに隠された秘密!? 「ぼくたちのリアル」のリアルとはなにか


大人からみると、「ぼくたちのリアル」というタイトルはありきたりなタイトルのように思えると思います。

宗田理さんの「ぼくらの七日間戦争」という本が流行ったのはもうだいぶ前ですが、なんだか「ぼくたち」がなにか問題を抱えた「現実(リアル)」に直面する、という話かなと予想がつくからです。

しかし、そんな予想をしつつ内容紹介を読むと、いきなり面食らうことになります。

そいつの名前は秋山璃在。(リアル)ぼくたちの学年で、リアルを知らないやつはいない。なぜって?リアルはすごいやつだから。学年一の人気者。ナンバーワンでオンリーワン。性格は明るくてお調子者。校内でかわいいといわれる女子は、いつもきまってリアルとうわさになる。人気子役との恋がこじれた合唱祭、家族の悲しい過去、いじめ……。それぞれ助けあいながら、三人は友情を深める。(講談社のサイトより)

そう、「リアル」とは、主人公の友達の名前なのです。

ここは現代の小説ならでは、といった感じです。大人からみると、いわゆるキラキラネーム? なんて思っちゃいますが、いまの小学生にこういう名前はもう当たり前の現実としてなっているわけですね。

物語の主人公はこのリアルくんではなく、リアルくんの隣に住む飛鳥井くん(作中でアスカというあだ名がつきます)です。この物語は一人称で書かれていて、アスカくんの視点から5年生に進級したクラスの状況を概観するところから始まります。

 

思わずギョッとしてしまう? 「LGBT」の問題


内容紹介にあったとおり、リアルは男女問わずものすごい人気です。

しかも勉強もスポーツもできる。そういえば小学校のとき、そんなスーパースターな子がいたなぁなんて思い出してしまいます。

アスカはそんなリアルと幼馴染で家が隣同士なのですが、学校ではリアルと比べられるのがイヤであんまり仲良くしていませんでした。しかし、5年生で同じクラスになり、出席番号の関係で席が前後になったこともあって、偶然にも接近してしまいます。

リアルがいるというだけでワクワクしているクラスに、男の子の転校生が現れます。名前は「サジ」。変わった名前ですが、顔立ちも外国人のようなので、「リアル」のようなキラキラネームではありません。

サジは、男の子でありながらも「美人」という言葉が似合う、かわいい男の子です。アスカも思わず「美しい」という感想を思ってしまいます(口にはしませんが)。

物語はアスカとリアル、サジの三人を軸に描かれていますが、サジをみていたアスカは少し違和感を覚えます。サジが異常にリアルに対して積極的で、リアルの喜ぶところをとにかくみたい様子なのです。あまりの情熱に、アスカは気づきます。

そう、サジは男の子が好きな男の子だったのです。アスカはだんだんとそんなサジの問題に気づいていきます。なぜ転校してきたのか、その原因もサジの嗜好にあったということもほのめかされます。

正直、小学生にとってこの問題は大変に大きすぎると思います。しかし、アスカはサジのことを偏見などまったく抱かず、大切な友達として見守ります。

非常に大人びている気がしますが、そこは筆者の力の見せ所。アスカの視点は非常に軽やかに描かれており、LGBTの問題など通り越し、人間を見据えることの大切さに気づかせてくれます。

小学校5年生という設定にはミスマッチのようにも思えますが、しかしそれくらいの子どもたちの純朴な気持ちというのもよく描かれていると言えます。

この本を通して、人間とはなにか、大切なものを子ども達に訴えたいという著者の思いも伝わるような気がしてきます。

 

それぞれの思いを乗り越えて 児童書とは思えないロマンチックな結末


学校ではさまざまな事件が起こりますが、三人はそれぞれが抱える問題を乗り越えていきます。

アスカは、リアルが家族を失った体験をしていることを知っています。詳しくは知りませんし、当初は知ろうともしない、という態度をとっています。

アスカはリアルと比べられるのがイヤ、ということ以上に、家族との死別がどのようなものかということに直面するのを避けたかったのです。ですが、リアルと仲良くなっていくにつれて、リアルがその問題で苦しんでいるということに気づきます。

サジの好意、リアルの世間に対する態度、そしてアスカの友達に対する思いやり。これらが混ざり合って、本当にいろんな思いを体験することになる三人ですが、それでもちゃんと乗り越えて成長していく姿が描かれます。

クライマックスのシーンは本当に著者の筆力としか言いようがない! さまざまなキーワードがひとつにまとまり、三人の友情は確かなものに変化します。最後は児童書とは思えないほど心を揺さぶられ、そして大人でもいろいろと考えさせられてしまいます。

最後に、リアルはサジの好意に対してある態度を示します。これがまたロマンチックで本当に小学生かと思ってしまいますが、どんな結末になったのか、ぜひみなさんの目で確かめてみてください。

 

課題図書、あなどれない!


いろいろと感想を書きましたが、毎年課題図書に選ばれる本は本当にどれも良質な本ばかりです。

すでにこれ以外にも3冊ほど目を通していますが、いまのところどれもハズレはありません。

これは読書法にも繋がりますが、児童書もたまには読んでみるとおもしろい! のです。

たいてい、課題図書になるような本は図書館で手に入ります。児童書コーナーは子連れでなくても来て構いません。ぜひ児童書コーナーへ足を運んで、読んでみてください!

投稿者: 森野

図書館で司書をしています

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